『火星の人』アンディ・ウィアー / 訳:小野田和子 / 早川書房
非常に理想的でお手本のようなストーリー構成です。
純粋に科学技術と知識・アイデアのみで過酷な状況を生き延びる主人公。
たった一人、火星に取り残され、生命を出来るだけ長く維持する方法を模索します。
長く生きるほど救助される可能性は高まります。
決してパニックにはならず、ひとつひとつの行動が、リスクを取りつつも戦略的・計画的であり、これを貫徹することはまさに理性の勝利となります。
陰謀や政治的かけ引き、火星人の存在、ありえない偶然などの余計な要素がありません。(多くのSF小説はリアリティのためか、そういう要素が組み込まれています。)
この小説は本当にアイデア勝負。
救出されるまで火星で生き延びることだけに焦点を当てた、宇宙空間サバイバルです。
登場人物も多くないし、それぞれにキャラが立っています。
なによりも、主人公のユーモアを失わない強さが、物語から悲壮感を消しています。
絶望的な状況なのに、読者視点からはワクワクドキドキ感しかないのです。
次から次へと難題が立ちふさがってきて、その対策を考えて、実行に移す。
でも予測を超えた事態が発生し、それでも焦らず自棄にならず、ベストじゃないけどなんとかベターな方法で結果を出す。
人生とはこうやって生きるべきだという見本です。
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