『思考の補助線』茂木健一郎 / 筑摩書房
何かと批判にさらされる茂木健一郎氏ですが、この本の内容は面白いです。
とにかく青臭い(いい意味で)。
自分がこれまで学んできた知識と身に付けてきた知性を以って、自分という存在をこれから世に問うてやるぜ!という野心があふれ出して伝わってきます。
2008年(10年前)に出版された本です。
つまり著者は当時40代半ば。
40代半ばにして、この危うい青臭さを保持し続けていられるのは中々稀有であろう。
本人はいたってマジメに語っているのだが、ツッコミ所がいっぱいあるのに本人はそれに気付いてないという、天然のツッコまれキャラなんじゃなかろうか。
芸人でいうと狩野英孝さんタイプ。
読み味は、若者の大言壮語のような印象を受けるかもしれません。
しかし、著者のキャラクター性や人格を無視して本の内容だけに着目すれば、こういう「知性に憧れと情熱をもつこと」は基本的には良いことなのではないかと思えるはずです。今、世界は反知性主義に陥りつつありますから。
世界にはアル中・麻薬中毒でも名文を生み出した作家がゴマンといるし、ロクな人間関係しか築けなくても極上の恋愛小説を紡ぎ出す人もいる。
素晴らしい人格の持ち主しか本を書いてはいけないのなら、この世の本はほとんどが存在しなかったことになる。
茂木氏の人格が悪いと言いたいわけではありません。
著者の人間性と本の内容は、一旦切り離してとらえるべきだということです。
批判されたことのある人物の書く文章がつまらないわけではありません。
むしろ批判されたことのない人物の書く文章の方がつまらないでしょう。