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【哲学・思想】『菊と刀』―アメリカ人から見た日本人論

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『菊と刀』ルース・ベネディクト / 訳:角田安正 / 光文社

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↑2008年新訳版。講談社その他でも出版されています。

 

著者はアメリカの文化人類学者(女性)だそうです。

第二次世界大戦末期、米国戦時情報局の依頼を受けて、日本人の研究をした報告書のようなものです。

1940年代のアメリカ人から見た、1940年代の日本人の行動理念や価値観なので、

現代の日本人の目から見てもかなり奇異に映ります。

もちろんほとんど変わっていない部分もあります。良い意味でも悪い意味でも。 

 

戦争が終わって70年余りしか経過していないのに、日本人の価値観や文化は恐ろしいほど変化したことが分かります。

逆に、アメリカ人はこの頃から徹底して合理主義で、現在と大して変わらないなという感想を持ちました。(日本人が急激に変わりすぎなのです。)

そもそも明治維新から終戦までが同じように70年余りしか経過していません。

そう考えると、江戸時代って意外と最近まであったことに気付きました。

 

戦争をするからには勝つことが前提で動いているわけで、

アメリカは戦争に勝った後は、どうやって日本(人)をコントロールするべきか…

日本人というものを理解しようと研究していたのです。

誤った方法論で支配しようとして、不平不満をもった日本がまた反抗してきたのでは困るとアメリカは考えていました。今後の国際社会で、アメリカの味方として有効に機能させるにはどうすればいいのか、ということです。

 

欧米的な視点からでは、どうにも矛盾しているように思える理解し難い日本人の行動。

古来より醸成されてきた日本特有の価値観や文化を、欧米人にも分かるように噛み砕いて説明しようと、著者が苦心した形跡が見て取れます。

現在の日本人は、当時の日本人よりも当時の欧米人の価値観に近いものを持っているように思えます。正直、同じ日本人ですが理解に苦しむ点も散見されました。

世間からの評判がメチャクチャ重んじられていたのですね。

現代的な感覚で語ると、戦時中も明治時代以前も非常に生きづらそうです。

現代に生まれてよかったと心底思いました。

僕のヤワな精神力じゃ、絶対生きていけない自信があります。 

 

 アメリカ人が理解できない日本人の行動や価値観をざっと列挙しますと、

・恩(恩返しも含む)

・義理(義務とは違う不本意性)

・恥(恥を知る人が立派な人だという思考)

・自重すること(日本だと自分の主張を抑えることですが、アメリカ人が自分を重んじるというのは、自分の人生観や良心に従って行動するという意味になる)

・無我の境地(宗教性のない自己研鑽の果ての境地)

・自己犠牲精神の欠如(アメリカ人は子育てを自己犠牲だと思っている)

・分相応の身分制度

・汚名をすすぐこと(生き恥をさらすくらいなら名誉の自殺を選択する)

 という感じでしょうか。

 

特に、「忠臣蔵」を理解できないそうです。

我々日本人は、復讐には正当性があると考えています。(逆恨みとは違う)

因果応報というか、悪いことをした奴や卑怯なマネをした奴は、同じ目に合って然るべきだと思っています。

ですので、けっこう衝撃的でした。

世界共通の感情だと何となく思っていたので。

 

終戦を迎えて(この本のオリジナルが出版されて)から70年余り。

当時の各国間の価値観の断絶感は恐ろしく深く、誤解と偏見に満ちていました。

現在では世界はグローバル化が進んで、色んな価値観や文化が混ざり合ってきました。

多少は誤解も減少し、相互理解が進展しました。

でもまだまだ問題は山積していて、解決はしていません。

 

誤解は最初は仕方ないとして、できるだけ偏見の目を持たないように異文化を観察しないと、誤解を拡大してしまうだけの結果になりかねません。

著者の「文化相対的」な公平な視点は、著者が師事した方から文化人類学のスタンダードになったそうです。それまでは欧州的な文化や価値観が最も優れていると疑いもされることなく信じられてきたのです。そりゃ、争いが絶えないわけだ。

 

日本人の文化や価値観が、アメリカの合理主義から見れば矛盾に満ちていて理解できないのは当然です。しかも昨日まで戦争をしていた国民に対して、公平な目をもって深く観察・分析できるのは、並大抵の冷静さとセンスではありません。

非常に洞察力に富んだ作家だったことが分かります。

70年経過した今でもロングセラーになっていることにもうなずけます。

2018年の今読んでも面白い。

日本人の視点から語ろうとすると、「恩」や「義理」なんて当たり前すぎて逆に説明しにくいですからね。

著者の説明は見事です。

日本人以外の誰が読んでも理解できます。

日本人よりもむしろ外国人の方に読んでもらいたい本です。

 

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