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【小説・ミステリー】『碆霊の如き祀るもの』―提示される70個もの謎!

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『碆霊の如き祀るもの』三津田信三 / 原書房

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 ↑表紙怖すぎ!『このミステリーがすごい!2019』第6位。

「碆霊」は「はえだま」と読みます。

 

読んでから知ったのですが、これはシリーズものです。

刀城言耶(とうじょうげんや)シリーズの9作目らしいです。

別にこの作品から読んでも何も問題ありませんでした。

 

何度か書いていますが、「シリーズもの」だからといって第1作目から読む必要は全くありません。

プロの作家さんは、どの作品から読まれても読者が理解できるように配慮して書いているからです。前作で出て来て本作でも知っておかないといけない情報は、きちんと説明してくれますし、前作までの情報を知らなくても本作で楽しめるような構成に練られてあるので心配無用です。

前作までの情報(流れ)を知った上でないと意味が分からないような書き方しかできない作家は三流なので、前作を読む必要はありませんし、そもそもその本は読まなくてよいのです。

 

今の小説家がなぜ「シリーズもの」を多く書くかといえば、そうした方が単発作品よりも売れるからに過ぎません。

作家自身がシリーズ化したいというよりも、編集部がその方が売りやすいということです。(固定ファンがつくとシリーズを通して買ってもらえる)

 

この「刀城言耶シリーズ」はホラーとミステリーの融合です。

 ホラー(怪談)がベースにある物語ですが、そこで起こった事件の謎はキッチリ解明されるという、ミステリーの形式をとっています。

謎を謎のまま終わらせるのがホラーで、謎を解明してみせるのがミステリーと、ざっくりジャンル分けできます。前者は非科学的でも許されるけれど、後者は謎解きにおいては科学的論理的でなければならないともいえます。トリックは物理的に可能かどうかが重要になってきますから。(物理法則を無視したミステリーは「バカみたいなミステリー」略して「バカミス」と呼ばれ、本格ミステリーとは別物になります。)

 

ホラーとミステリーの融合でいえば、京極夏彦の「京極堂シリーズ」に近い感覚です。

京極堂シリーズでは妖怪がモチーフとなって事件が起こります。

妖怪の成り立ち(由来)を伏線とした事件の謎を解明(解決)するという形式です。

ある妄念に憑りつかれてしまった犯人を、中禅寺秋彦が「憑物落とし」 して正気に戻すわけですが、これを妖怪に操られた状態だと捉えて、読者に分かりやすく解説してくれるという構造になっています。

 

「刀城言耶シリーズ」は妖怪ではなく怪談がベースです。

怪談をもとに、それに見立てた殺人事件が起こります。

この作品では冒頭の100ページを使って4つの怪談が語られます。

なかなか本編の主人公である刀城言耶が登場しません。

勇気のいるすごい構成です。

後半のストーリーやトリックに著者が自信がある証拠ともとれます。

 

 全部で500ページあり、中盤までは事件に関する推理は堂々巡りを繰り返し、ほとんど進展を見せません。

しかしラスト70ページあたりで、70個の謎を著者が提示してから一気に怒涛の謎解きが始まります。

正直、これだけ量の謎があと70ページで全部解説できるのか不安視しながら読んでいました。謎の作り過ぎ・・つまり風呂敷を広げすぎなんじゃないかと。

 

不安は杞憂に終わりました。

見事に全部解説され、著者の力量に感服しました。

できるものなんですね。すごい!

 

一番の謎は何と言っても竹林の中での餓死事件のトリックです。

被害者に縛られた跡はないにもかかわらず、竹林の迷路から脱出できずに餓死してしまったという事件です。

空腹で人が死ぬには5日くらいかかるそうです。

その間になぜ被害者は密生した竹林の中心から逃げなかったのか。

動機から考えて自殺ではなさそうだが、事故なのか他殺なのか分からない。

他殺ならどうやって餓死させたのか。

冒頭で語られる怪談の一つ「竹林の魔」が、事件のイメージをさらに恐ろしく不可解なものへと誘導します。上手い。

 

謎の解明編も珍しい形でした。

大抵、謎が全て解けた探偵役は、事件の関係者を全員集めてトリックを解説した後、犯人を名指しします。

『金田一少年の事件簿』で「謎はすべて解けた」からの「皆を集めてくれ」と言う流れはテンプレートとなっています。

ミステリーのほとんどがこのパターンです。

 

しかしこの作品では、探偵とワトソン役の二人の対話によって謎が解明されていきます。関係者や警察に解説してあげていません。

犯人が警察に聞かれたくないこともあるだろうという配慮と、動機や犯人のその後の人生を考えると警察を介入させたくない部分もあるという美学によるものです。

珍しい謎解きスタイルです。

 

警察や容疑者たちの前でドヤ顔で推理を披露したがる古今東西の名探偵たちにも、

少しはこういった配慮をしてもらいたいものです。

真実とは大勢の前で暴露すべきでない場合もあるのです。

 

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