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【マンガ】『きみを死なせないための物語』(1-2巻)―長命は善で、短命はかわいそうなのか?

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『きみを死なせないための物語』吟鳥子 / 秋田書店

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⇧『このマンガがすごい!2018』オンナ編7位。


<ネオテニー>

「 ネオテニー」という言葉をご存知でしょうか。

日本語でいうと「幼形成熟」です。

幼生形の段階で生殖機能が成熟して繁殖可能な状態になる現象のことです。

つまりオタマジャクシはカエルになりますが、オタマジャクシの段階で成長がストップしたのに繁殖可能な状態になることです。

ウーパールーパー(メキシコサンショウウオ)が代表例として有名ですね。

「人間は猿のネオテニー」という説もあります。

(人間は大人になっても猿のように全身に毛が生えないけれど、生殖機能を獲得します。)

 

このマンガでは「人類のネオテニー」たちが主人公です。

つまり普通の人間よりも子供でいる期間が長く、寿命も(明記されていませんが)相当長くなった新人類のことです。

 

<宇宙都市で暮らす人類>

今よりも未来。

何らかの理由により地球に住めなくなった人類は、宇宙空間に都市を築いて生活していました。(理由は2巻まで読み終えましたがまだ明かされていません。)

長命な新人類である主人公・アラタは、同じネオテニーの友人であるターラ、シーザー、ルイと大体いつも一緒に行動しています。

ネオテニーは突然変異みたいで、どこかの家庭に突然生まれるようです。

つまりまだまだ数が非常に少ない人種なのです。

人類は、ネオテニーという新しい貴重な遺伝子に価値を見出していました。

 

宇宙空間では地球以上にスペースや資源が限られているので、個々人の社会的評価のランクによって優遇されたり冷遇されたりします。

権利が平等に与えられているわけではありません。

社会的価値がなくなったと判断された人間は、専任の人に連れていかれて安楽死させられる制度があるようです。

「姥捨て山」と似たような制度です。宇宙で食糧やエネルギーは限られているのです。

ネオテニーはその希少性と遺伝子の優位性から、社会的評価が高く設定されていますが、その制度の例外としてみなされているわけではありません。

人類社会にとってもはや有用ではないと判断されれば、安楽死リスト入りになります。

 

<短命の病・ダフネ―症>

アラタたちはある日、ダフネ―症の女性と出会います。

ダフネ―症とは、緑人症とも呼ばれ、一万人に一人の奇病です。

胎児のときに全身の細胞が光合成をするように変化してしまい、16年ほどしか生きられない恐ろしい病気です。

ネオテニーのアラタたちとは対照的に、短命なのです。

その女性を死なせてしまった事件を引きずるように、アラタは国連大学でダフネ―症治療法の研究に没頭します。

 

ある日ダフネ―症患者の少女・ジジが、被験体としてアラタのもとへやってきます。

アラタは今度こそ、少女を死なせないことを誓います。

 

 ダフネ―症患者は人権が保証されていません。

短命なので何かを教えたところで意味はなく、価値もないとみなされています。

ひどいですね。

しかし、宇宙空間という資源が限られた環境で人類社会を維持していくためには、そういった非人道的な合理性が必要になってくることも分からなくはありません。

 

<長命は善なのか>

 現代では「人類100年社会」と言われ始めていますが、どうも人類は「長寿」に憧れすぎではないでしょうか。

「長寿」を崇高なもの、神聖なこと、偉大なことだと無条件に信じている人が多い気がします。「ただ長く生きているだけで偉い」という感覚は、若くして亡くなることが多かった戦争時代の名残りなのではないかと思います。

平和になった現代でも、長生きすることに注力し、何のために長生きするのかという問いはなおざりにされがちです。

人生は時間的な長さではなく、内容の充実度の方が重要だと僕は考えています。

 

 どうも人は自分よりも寿命が短い人や生き物を、「儚い」とか「かわいそう」とか考える傾向にあります。

それは感情の勝手な押し付け(投影)です。

 

 時間の流れる体感は、生き物によって違うという説があります。

ゾウの体感時間はゆっくり流れ、ネズミの体感時間は早く流れていて、

ゾウとネズミの物理的な時間での寿命は違うけれど、体感としての一生の時間の長さは同じだということです。

さらに言えば、人それぞれ、体感時間の流れ方が違う可能性も考えられます。

物理的な時間では短命だからといって、不幸だとは限りませんし、充実させるには不十分だとも限りません。

価値が低いわけでもないですし、無意味なわけでもありません。

 ゾウを羨ましがる必要はありませんし、ネズミやセミの一生に同情して可哀そうに思う必要も意味もないのです。

  

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