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【小説・文学】『一千一砂物語』—美しさ=はかなさ?

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『一千一砂物語』稲垣足穂 / 新潮社

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 ⇧1969年出版の短編集。

表題作は1923年に発表されたものです。

 

<ピース・又吉さんのおすすめ本>

この本は、お笑い芸人のピースの又吉さんがおすすめされていたので買いました。

僕は又吉さんが好きなのですが、本の趣味はほとんど重なる部分がありません。

僕がミステリーやSFなどのジャンルを好んで読むのに対して、

又吉さんは純文学的なものや、詩的なもの、人の内面に深く迫るものを好まれているような印象を受けます。

 

自分の好きなジャンルばかり読んでいても世界は広がらないので、

普段読まないものをたまには手に取ってみるべきです。

とはいえ、未知のジャンルは何から手を出してみるべきか皆目分からないものです。

あるいは関心のないジャンルにわざわざ踏み込むのは、すぐに飽きてしまいそうで躊躇してしまいます。

 

未知のジャンルに興味がわかないなら、自分が尊敬する人や好きな人から紹介してもらえばいいのです。

その人をきっかけにして、ちょっとは興味が持てるようになります。

「あの人がそこまで薦めるとは、一体どんな本なんだろう?」と思うはずですから。

 

ちなみに又吉さんは、新潮文庫の20選として、

この『一千一砂物語』の他に以下の作品を紹介されていました。

・『沈黙』遠藤周作

・『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹

・『きりぎりす』太宰治

・『春琴抄』谷崎潤一郎

・『思い出トランプ』向田邦子

・『午後の曳航(えいこう)』三島由紀夫

などです。(他13作品)

 

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<変幻自在の文体>

この本は短編集です。

稲垣足穂の名前は知っていましたが、読んだことはありませんでした。

通読した印象は、「器用な作家だな」というものでした。

ほぼ100年前の作品なのに普通に読めてしまう文章もすごいのですが、

作品毎に文体がコロコロと変幻自在に変わる様はもっとすごいです。

 

星新一のようなショート・ショートの表題作『一千一砂物語』。

昔の西アジア風な舞台設定のファンタジー『黄漠奇聞』。

児童文学風の文体の『チョコレット』。

日常を詩的に描いた『星を売る店』。

青年期の自叙伝のような作品『弥勒』。

お散歩エッセイかと思いきや、後半から哲学講義に入る『美のはかなさ』。

下ネタの論説文のような『A感覚とV感覚』。

 

よくもまあこれだけの文体を書き分けたものです。

才能にあふれた作家だったことが分かります。

 

年齢的なことを考えれば、星新一よりも発表が早かったはずです。

ショート・ショートの先駆者ともいえる作家のようです。

分かりやすい寓話的ファンタジーの『黄漠奇聞』が一番面白かったです。

 

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<美のはかなさ>

上記にもある通り、収録されている短編の一つ『美のはかなさ』では、

後半部分がエッセイから評論文にシフトしていきます。

受験勉強のときに何度も読まされた国語の評論文は、大人になってからはまず読むことがないので新鮮でした。

(学生時代、得意な科目など一つもなかったのですが、国語は特に苦手でした。)

 

ここでは「美しさ」についての論考がなされます。

まず「はかなさ=fragility」と定義します。

「fragility」とは壊れやすさ、傷つきやすさという意味です。

そのうちの優れたものが「美」であるという主張です。

さらに時間経過による視点など細かく論じてありますが、大雑把にまとめると上記のようなものになると僕は解釈しました。

 

主観的な感覚になるのですが、「はかなさ」から「壊れやすさ」に翻訳したときに、

情緒的なニュアンスが若干抜け落ちている気がしないでもないです。

まあ著者の主張に完全に納得できる評論文などありません。

しかし、自分では思いつかなかった視点に気付かせてくれる点では価値があります。

 

 「美しさ」に関する自分の感受性は、芸術家以外の方は改まって再点検しようとしないものです。

普段そんなこと考えもしないでしょう。

この短編集は、「何を美しいと自分は感じるのか」を立ち止まって考えるきかっけを提供してくれます。

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