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【小説・文学】『JR』―人間にとって大事なのは感性か、合理性か

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

 『JR』ウイリアム・ギャディス / 訳:木原善彦 / 国書刊行会

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 ⇧2018年12月21日発売。

全米図書館賞受賞。

表紙がカッコイイですね。

アメリカでは1975年に出版されたそうです。 

 

<金融コメディ>

マンガ『こち亀』の主人公・両さんこと両津勘吉はご存知でしょうか。

警官のくせに色んな儲け話に目がなく、手当たり次第にサイドビジネスに挑戦しては失敗するというのがよくあるパターンです。

しかし、たまに予想外の大成功を収めて大ごとになってしまい、上司の部長に怒られるか、さらに調子に乗って全てを失ってしまうというオチがつきます。

周囲の人間は両さんの勢いに負けて、協力したりかばってくれたりします。

 

この『JR』という小説の主人公も金儲けのことを常に考えています。

どこかにビジネスチャンスが転がっていないか、目を光らせています。

 

日本ではお金儲け拝金主義が「悪いこと」として考えられがちですが、アメリカでも出版当時の1970年代ではそういうイメージを持つ人が多かったみたいです。

現代よりももうちょっと社会がのんびりしていた雰囲気というのでしょうか。

今では学生でも、アイデアがあるならビジネスチャンスを狙うのは当たり前という価値観に変わってきましたね。

 

この小説は一人の少年がビジネスで大成功を収めるも、やがて事業が崩壊してしまうまでを描いた、『こち亀』みたいな金融コメディ作品です。

 

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 <あらすじ>

 主人公は11歳の少年、JR・ヴァンサント。(小学4年生)

彼はお金儲けのことを常に考えています。

 友人と無料カタログを見せ合って色んなガラクタを取り寄せて、何かビジネスチャンスにつながらないか毎日議論を交わしています。

海軍はピクニックフォークを廃棄したがっており、陸軍は新しく食器を購入したがっているという情報を得た彼は、フォークを海軍から安く仕入れて陸軍に売るという仲介業で利益を得ます。

 

ある日、学校の社会科見学で株の証券取引所に行くことになりました。

そこで先生から株の購入について教えてもらった彼は、これまでのビジネスで稼いだ元手を使って、割安の社債を大量購入します。

(※割安株を狙って買うことは基本的戦略としては正しいですが、会社の財務状況を度外視しての購入ならば大抵は値上がりすることなく終わってしまいます。仮想通貨の草コインと同じで、銘柄に魅力が無ければいくら安くても価格が上昇することはありません。しかし11歳なのでJRはそこまで考えていません。)

 

 JRの通う小学校には、臨時の音楽教師・エドワード・バストがいました。

彼はドジで性格的に押しに弱く、お金に困っていました。

彼に目をつけたJRは、バストを自分の会社の幹部に抜擢し、対外交渉兼窓口役になってもらいます。(大人は社長であるJRがまだ子どもだと分かればナメてくるから)

本当は音楽の創作活動で食べていきたいバストでしたが、JRに言いくるめられて、JRの会社に渋々居続けることになります。 

 

株主となったJRは集合代表訴訟をチラつかせます。

すると都合よくその会社の幹部たちが不正を見抜かれたと勘違いしてくれて、多額の和解金もゲットします。

資金が増えてきたJRは、豚肉の先物取引にも手を出します。

彼の快進撃は止まりません。

 

JRは顧問弁護士や広報担当者も雇い、事業は彼の手で管理しきれないほど拡大していきました。大成功を収めたかに見えましたが、やがてJRの知らないところで、彼の事業が悪く受け止められて訴えられ、会社も社長を解任させられることになりました。

果たして彼はこのピンチをどう切り抜けるのでしょうか。

 

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<まとめ>

この小説は本文のほぼ9割が会話で構成されています。

そのため一文一文は難しくはないのですが、状況や人物同士の相関関係が分かりにくくなっています。

出来事の背景も明快に解説されていないので、読者が会話内容から推理するしかありません。

 推理ゲーム・パズルゲームのような感じです。

かなり難解なので、初読で全てを把握することは不可能でしょう。

「まずはこの人物に焦点を絞って読もう」という取捨選択が必要かもしれません。

 

 

物語後半(800ページ過ぎ)のJRとバストの議論が特に面白かったです。

お金の力を信じているJRと、音楽の力を信じているバスト。

会社の税控除や純資産についての話しかしないJRに業を煮やしたバストは、名曲と呼ばれる音楽をJRに聴かせようとします。

偉大な音楽に耳を傾けろ」

「世の中には形のない宝がある」

「 音楽はただの効果音じゃない。音楽でしか表現できないことがある」

 と力説するバストに対し、

 

「今聴かせてもらった音楽はくそったれだ」

「偉大な音楽をラジオ局で流すお金は誰が払っているの?

 あのラジオ局は赤字を積み重ねていて、買収しないと助けられなかった。」

と答えるJR。

 

お金の合理性か、音楽を理解できる感性か。

どちらが人を救うほどの力があるのか。

どちらがより大事なのか。

 彼らの議論は平行線のようでいて、本質は一緒なのだという結論に至ります。

二人とも誰かに頼まれもしないのに、自分がせずにはいられないことをしているだけなんだと。

 

半世紀前のアメリカはまだ感性の方を重視する価値観で動いている部分が多くありましたが、今では合理性や効率性が幅を利かせた価値観に染まっています。

この小説ではアメリカ人の価値観が変わり始める時代の空気感を感じられます。

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