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【小説・ミステリー】『終焉の日』―親が犯した罪は、子が償うべき?

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『終焉の日』ビクトル・デル・アルボル / 訳:宮崎真紀 / 東京創元社

⇧2019年3月20日発売。

日本で翻訳されることの珍しいスペインのミステリーです。

登場人物の名前もイタリア語や英語に近く、スラブ系や南米系の人名のような、発音しづらさに由来する名前の覚えにくさはありません。

 

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<意図的な冤罪事件>

政治や経済界での陰謀論は数多くありますが、一般市民にとっては雲の上の出来事のようで、リアリティを持ってとらえることは出来ないものです。

しかし身内(家族や親戚)や身近に政治家や官僚がいる場合は、普通に生活しているだけなのに陰謀に巻き込まれることがあります。

巻き込まれるだけならまだマシですが、最悪の場合、身に覚えのない罪をなすり付けられることもあり得ます。

 

何か都合の悪い事を起こす(起きた)場合、責任を取る必要があります。

責任は、普通なら組織のトップや事件の主導者が主に引き受けます。

政治家や有力な官僚たちは責任を取りたくないので、部下や無関係の人間をスケープゴートに仕立て上げて、事件をうやむやに処理しようとします。

 冤罪をでっち上げるということです。

容疑者を間違えて冤罪にしてしまうのではなく、意図的に罪をかぶせるわけです。

 

政府の言いなりのマスコミは、有力な政治家に都合のいい報道しかせず、世間はそれを事実だと判断します。

マスコミも警察も司法も権力者の言いなりです。

そうなったら冤罪を押し付けられた者に味方は誰もいなくなるので、裁判の判決は覆せません。

 

 この小説では、そんな冤罪事件が描かれます。

政治家の陰謀によって親子二代に渡って別の罪状を背負わされる悲劇です。

 読み応えのある大河小説です。

 

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<あらすじ>

舞台は1980年のバルセロナ(スペインの首都)。

貧乏な弁護士のマリアは相棒のグレタと一緒に事務所を開業していました。

ある日、世間で注目を集めそうな案件を持った依頼人がやって来ます。

 

依頼人の女の話はこういうことです。(以下)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~⇩

 

ある日、見知らぬ刑事(セサル)が夫を訪ねて来ました。

刑事は12歳くらいの女の子の写真を見せて、この子を近所で見かけたことがあるか、あるいは夫から何か聞かなかったかと尋ねました。

女がいいえと答えると、刑事はそのまま立ち去りました。

 

後日、見たことのある二人の刑事がやって来ました。

彼らは、女の夫が今病院に居て、命が危ないかもしれないと知らせてきました。

そして、10万ペセタ渡すから告発はするな。あとは全部こちらに任せろと言いました。

 

女の夫を殺そうとしたのは先日女の子の写真を持って訪ねて来た刑事(セサル)で、夫を何日も地下室に閉じ込めて拷問にかけたのです。

女はセサルを告発したいのではなく、二人の刑事からもっとお金を引き出したいと考えて、弁護士事務所を訪ねたというのです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

女の目的が褒められたものではないことは分かりましたが、マリアは女の動機に関係なく、警察の不祥事という大事件に興奮します。

彼女は、その案件を取り扱うことが自身のキャリアアップにつながるチャンスだと確信し、よく考えもせずに依頼を引き受けました。

 

セサルはすでに逮捕されており、裁判で勝つための有力な証拠集めにマリアは奔走します。

そしてあまりにも多くの有罪証拠と、その刑事を非難するあまりにも大勢の証人が次々に見つかりました。

裁判は順調に進み、世間からは注目され、マリアは時の人となり、大手弁護士事務所からスカウトされるほど有名になりました。

 

しかしその後、依頼人の女の夫は妻を殺害し、行方をくらませます。

写真の女の子の正体も行方も、誰も気にせぬまま事件は収束しました。

何か腑に落ちないものをマリアは感じましたが、思惑通りに出世できたことで、モヤモヤした疑念には見て見ぬフリをします。

 

後日、離婚したマリアの元夫が現れ、マリアが知らぬ間にある政治家の陰謀に巻き込まれていることを教えます。

実はマリアが裁判で有罪にしたセサルは無実であり、写真の女の子は誘拐されたセサルの娘だったのです。セサルは娘の監禁場所を白状させるために、男を拷問してしまったのでした。

つまりマリアは出世に目がくらみ、冤罪事件を成立させるために積極的に動いていたということです。(正確には動かされていた。)

 

そして、これがただの誘拐事件ではなく、40年前から続く政治家の権力闘争が背後にあることが分かってきます。

政治家の出世に邪魔な多くの人たちを殺害し、あるいは罪を着せ、社会的に抹殺してきたのです。

さらにその陰謀にマリアの父も関わっていたことが判明します。

 果たしてマリアは、この壮大すぎる事件をどう解決するのでしょうか。

 

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<まとめ>

当時(1980年)のスペインは民主化してまだ間もなく、フランコ将軍によるファシズム政権の影響がまだまだ色濃く残っていました。

ファシズム政権ができる前はスペイン内戦(1936~1939年)で国中がゴタついていました。

戦時中やファシズム政権下の国では、生きるために誰もが周りの人間を裏切り、騙し、嘘をつき、罪を犯さざるを得ませんでした。

 

戦時中の日本人と同じように、当時のスペイン人も国から与えられた大義を信奉し、何よりもそれを遵守することを優先しました。

そのせいで現在の価値観から見れば卑劣な犯罪だと言われても仕方ないことも、多くの人が実行しました。

誰もが無実ではいられなかった時代です。

 

この小説では、そんなファシズム政権でのし上ろうとするたった数人の権力者の都合に翻弄された、何十年も続いてしまう3つの家族の悲劇が描かれます。

 

時代が経過すれば、自らの過去をなかったことにして誰にも責められずに平穏に暮らしたいと考える者も出て来ます。

しかし被害者の親族たちはそれを許しません。

 

では親が犯した罪は、子が償うべきなのでしょうか。

 

父親の罪(殺人)を知ってしまった娘(マリア)の葛藤が描かれています。

 

過去の犯罪が、現在に生きる人々にまで影響を与えてしまうのは悲劇です。

とはいえこの物語は、政治家や陰謀といった言葉だけで説明しきれるほど単純なものではなく、色んな立場の人たちの様々な思惑が複雑に絡み合って事件が構成されています。

著者の構成力に驚かされます。

よくこんなに登場人物たちの人間関係を、違和感なく交錯させられるものです。

 

非常に長いというわけでもない分量(500ページくらい)なのに、

もっと長い時間を体験したかのような読後感が味わえます。

物語の密度が高いということでしょう。

内容はけっこうハードですが、読みやすい文章のサスペンスミステリーです。

 

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