『アルボスアニマ』橋本花鳥 / 徳間書店
⇧1~4巻までは紙のコミックもありますが、
5巻からは自費出版になり、電子書籍版しかありません。
2019年9月末の段階での最新刊は5巻です。
<植物採集家>
この漫画の主人公は植物採集家です。
今風に言えば、プラントハンターです。
プラントハンターは17世紀~20世紀にかけてヨーロッパで盛んだった職業です。
具体的には、食料や薬に利用するための植物や観賞用の新種の植物を探して、依頼主のもとに届ける仕事です。
当時のヨーロッパ人たちは、その捜索範囲を東南アジアにまで広げていたそうです。
ちなみに現在でもプラントハンターを生業にされている方はいます。
植物には固有の生息地域があります。
つまり生育や繁殖に適した気候がそれぞれにあるということです。
だから新種の植物を発見したからといって、無闇に別の国や地域に持ち運んだりすると、適切な生育環境ではなくなるのですぐに枯れてしまいます。
それでは商品になりませんし、すぐに植物の元気がなくなったら顧客からクレームが入ります。
これは素人はもちろん、プロの植物採集家にとっても悩みの種でした。
その問題を解決するため、19世紀前半に「ウォードの箱」がイギリスで発明されました。
ウォードの箱とは、植物を輸送する時に使われる容器のことです。
これはほぼガラスだけで組み立てられています。
植物の状態維持に必要なのは、光と水と熱です。
ガラスは光と熱を通すけれど、中の水分は逃がしません。
植物が生きるための世界はウォードの箱の中だけで完結し、数ヶ月にもおよぶ海上輸送に耐えることが出来るというわけです。
要は最近の流行の言葉でいえば、「テラリウム」です。
このウォードの箱の発明により、シダ植物やランといった繊細な植物の運搬も可能になり、ますます植物採集の捜索範囲は広がりました。
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<あらすじ>
時は19世紀。
主人公は植物採集一族(レスコット家)に生まれたエリートの少年・ノア。
彼には触れた植物の根から記憶を辿ることができる「起源追想」という能力がありました。
しかしこの特殊能力は悲劇をもたらすと言われていたため、彼は幼少期から15年間温室の植物園に閉じ込められて育ちました。
そして植物採集家だった父親が亡くなったため、彼はレスコット家の稼業を継ぎ、植物採集家として外に出かけることが可能になります。
ノアは元海賊の用心棒・ラジャートとともに、東南アジアを訪れていました。
そこでイギリスのディーバ商会からの使者(パクストン)と出会います。
パクストンはとある伯爵から手紙を預かってきました。
その内容は「失われた百合(ユリ)」の採集依頼です。
その蕾(つぼみ)には紅が差し、花弁が開けば純白へと変わり濃密な芳香を放つ、ヨーロッパにたった一輪の百合です。
伯爵は手違いでその百合を枯らしてしまったので、もう一度手にしたいというのです。
しかし採集地を知る唯一の採集家は、その帰路で荒れる波に船ごと飲み込まれ、行方不明になってしまったのでした。
つまり「名前もどこに生えているかも分からない花を探せ」という依頼です。
ノアたちは、亡くなった採集家の乗っていた船の残骸が漂着した島を訪れました。
漂着物から百合の採集地を割り出そうという作戦です。
ところがその島には、近辺をナワバリにしている海賊もいました。
当然のことながら、彼らのナワバリに侵入したノアたちは襲撃を受けます。
果たしてノアたちは目的の百合を発見して、イギリスに持ち帰ることができるのでしょうか。
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<まとめ>
希少な植物を求めて世界を探検するプラントハンター(植物採集家)の物語です。
1巻では百合の他に、ランのエピソードが描かれています。
19世紀にはランの価格が美術品と変わらないほどに高騰して、それを巡って様々な勢力が採集競争をしていたようです。
植物の知識がなければ、「植物を発見するよりも採集家から奪った方が早い」と考える乱暴な者もいました。
新種を発見して持ち帰れば一攫千金も夢じゃないので、当然のなりゆきです。
19世紀の植物採集家は、そういった危険と隣り合わせの職業なのです。
お宝(希少植物)を巡る冒険マンガです。
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